学校の働き方改革「10の提言と50の具体策」

持続可能な学校をつくるための具体的な提案

【提言1】「時間」を基準にしたマネジメントを

学校はマネジメントが極めて苦手です。労務管理、特に時間管理に関わるマネジメントは「ない」と言ってもよいくらいでしょう。

 

一例として、ある小学校の授業コマ数の運用を示します。

(以下の話は若干複雑ですが、時間に余裕がある方や関心が高い方は確認しながらお読みください。)

ある小学校6年生の始業式4月5日から卒業式3月16日まで、長期休業を除くと全部で約42週。

6年生は週28コマが授業に充てられていますから、フルに実施したら1176コマあります。しかし実際には、祝日や半日授業、研修による休業などで削減され1100コマが授業可能なコマ数でした。

教科の標準コマ数は学習指導要領で定められおり、年間980コマです。

つまり、1100ー980=120コマの余剰コマ数があります。

さて、この120コマが実際に何に使われるかというと、それは「行事、クラブ・委員会、児童活動」(以下、「行事等」)になります。ただ、これらの「行事等」は標準コマ数が設定されていません

実際にどれだけのコマ数が「行事等」に費やされていたかというと年間87コマでした。

余剰コマは120ですので、87コマは余裕で「枠内」であるように見えます。

しかしこれらは、「表面上の計算」の話です。

例えば、運動会は行事等としては12コマの扱い(本番が6コマ、全体練習と予行が6コマ)ですが、実際には6年生は応援練習、競技の練習などで12コマ以外に23コマを使っていました。これら23コマは行事としてではなく、応援で声を出したから国語、開会式で歌を歌ったから音楽、応援グッズを作ったから図工、というようにかなり弾力的に運用されていました。運動会全体では35コマの大行事です。(道徳の1年間の標準コマ数が35ですから、これがどれだけ大きな数か分かっていただけると思います。)

その他にも学習発表会は45コマ(処理上は行事9コマ)、卒業式は25コマ(処理上は行事5コマ)で、実際にカウントされている数倍の準備コマがありました。

年間にすると、トータル87コマの行事等に対して、実に86コマの準備コマ数が必要でした。行事等と準備を合わせて173コマ。しかし、余剰コマは120ですから53コマのオーバーです。

これらのオーバーしたコマ数はこの学校では担任の裁量で総合、学活、国語、音楽、図工などで処理されていましたが、本来は教科の学習を進めるためのコマです。当然、学期末に進度が追いつかないことが多々あります。その結果として、何とか指導の内容を終わらせるような授業が行われることになるのですが、それらは明らかに先生と子どもたちに負担になってしまいます。

また、行事が多いために教員は放課後遅くまでその計画や準備に追われています結果として「授業の準備をする時間がない」というのが教員の最大の悩みになっています。これではよい教育はできません。

 

今回の例は星の数ほどある教室のある1つですが、日本中のあらゆる教室で詰め込みすぎによるさまざまな「歪み」が生じているはずです。それは、教育を司る行政自身が必要な時間を無視した施策をどんどん学校に下ろしているからです。それが、教職員の長時間労働を招き、最終的には子どもたちが学ぶ権利を侵害していることを認識しなければいけません。また、学校も自身のマネジメント=計算で、適切な運営を行うべきです。

あらゆる行政施策が予算を前提として進められるのに対して、教育はお金をかけなくても教職員の自主的な時間外労働で可能になるため導入に制限がかかりにくいです。しかし、時間には制限があります。予算と同じように必要な時間を計算して「枠の中」に入れるマネジメントをするべきではないでしょうか。

 

【提言1】「時間」を基準にしたマネジメントを

 

今後、その具体策をブログの中で提案していきます。

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