学校の働き方改革「10の提言と50の具体策」

持続可能な学校をつくるための具体的な提案

【具体策9】子どもの登校時間の適正化を

教職員の勤務開始時刻は8時00分から8時15分くらいに設定されている学校が多いようですが、多くの子どもたちはその前に学校に到着している現状があります。8時前後を子どもたちの登校時間として設定している学校が多いようです。家を出る時間はさらにその前の7時台になります。

独立行政法人日本スポーツ振興センター災害共済給付の基準に関する規程」では、「通常の経路及び方法により通学する場合  通学するとき  登校中  下校中」は学校の管理下という判断がなされており、事故があった災害給付の対象となっています。勤務時間外に責任を負う状態が発生しているということになります。

この状態をどのように判断すればよいのでしょう?

2017年に行われた中央教育審議会で「登下校の見守りは自治体の業務」という結論が出ました。

つまり、登下校中の安全確保は「学校の管理下」であるが「教職員が見守る必要はなく、責任は自治体にある」という判断になると思います。(この場合の「学校の管理下」というのは、「学校=校長・教職員」ではなく、「学校=設置者」という見方が適切かと思います。)

では、子どもたちが7時50分に学校に到着して、教職員の勤務時間開始が8時10分であった場合、7時50分に〜8時10分の20分間の子どもの安全管理は誰が行い、トラブルがあった場合の責任は誰が取るのでしょうか?

このブログの【提言3】「グレー」な運用を適正化するでも申し上げたように、学校にはこのような管理上の「曖昧さ」が随所にあります。結果としてその全てが学校=教職員の負担になっているというのが現状です。

現状を整理すると、

①子どもを早く登校させたい保護者がいる(自分の出勤時間の都合等で)。子どもを早く登校させたい教職員がいる(部活動の指導等で)。

②早く登校させたい保護者・教員の要望を管理職が受け入れる。

③教員の勤務時間前の登校が常態化する。

④「子どもが登校しているのだから、教員は早く登校して当然」という指導が行われたり、自主的に「教室で子どもを待とう」という活動が推奨される。

という流れがあります。

これによって、勤務時間の延長というコストが発生し、子どもの安全管理のリスクも増加しています。

中には、教職員の勤務時間前に、学校に到着した子どもから校庭でランニングをさせるという学校もあります。もしある子どもが心臓発作で倒れたら、もしその日に限って職員の出勤が遅くなって誰も見ていなかったら。そう考えると、この運営は正気の沙汰ではないと私には思えます。 

 

当たり前に考えて、教職員の勤務時間前に子どもが学校に到着するということ自体があり得ないことです。私はこの状態を行政が放置しておくことは極めて望ましくないと思います。

子どもの登校時間を遅らせなれないならば、中央教育審議会の中で委員の妹尾昌俊さんが「朝の見守りスタッフ」を提案しているように、予算をつけて空白時間が出ない制度を作るべきです。

 

おそらく、適正な運用になった場合、教職員には朝「子どもたちがいない」状況が生まれます。例えば、教職員の勤務開始時刻を8時05分とし児童・生徒の登校時刻を8時20〜30分にした場合、朝に15分程の授業準備等の時間が発生します。これだけで月5時間程度の時間外勤務の縮減が期待できます。

朝の読書や朝の会を縮減し、できるだけスムーズに1時間目の授業に入る時間設定を工夫すれば、日課運営は十分に可能です。実際、地域や学校によっては児童・生徒の登校を8時30分までと設定しているところもあります

 

もう1つ言えば、子どもたちの下校時刻も早めればいいと思います。中学校は部活動があるため、別の議論が必要ですが、小学校では時間を切り詰めて、できるだけ早く下校させることで、時間が生まれます。

学校が子どもを長時間預かると、勤務時間のコストと安全管理のリスクのダブルの負荷がかかるのです。また子どもがいない時間をできるだけ長く取ることで、様々な準備を集中して行うことができます。

 

かつては学校は、学校ー家庭ー地域の「信頼関係」で成り立っていました。今は「法」が先行する時代です。それはとても残念なことですが、訴えられた学校が「信頼関係の下でやっていました」と言っても認められません。信頼関係はもちろん大切ですが、それはしっかりした土台=適法な条件整備の上で育まれるものだと思います。子どもの登校時間の適正化を望みます。

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