学校の働き方改革「10の提言と50の具体策」

持続可能な学校をつくるための具体的な提案

【提言4】「マスト」と「ベター」の区別をする

学校運営における「マスト」と「ベター」の曖昧さは極めて大きな問題です。

例えば、出席簿は公簿でありマストです。運動会はマストではありません。学校行事の中に「体育的行事」を行うことは示されていますが、100m走記録会でも構わないのです。

ベターでありながら非常に大きな負担を生じさせているのが通知表です。中学校では内申書の補助簿、準公簿的な扱いにはなっていますが、法的な根拠はありません。

逆にマストでありながら、適切な運用がされていないのが学習指導要領です。各教科の指導内容が冊子になって細かく示してありますが、ほぼ読まれていません。勤務時間内に読む時間が設定されないからです。中学校であれば専門の教科についてだけ読めばいいのですが(それでも読んでいる人は多くないようですが)、小学校のように国語、算数、社会、理科、体育、図工、音楽、生活科、家庭科、総合、道徳、外国語、特別活動となると多忙な現場できちんと理解するほど読み込むのはほぼ不可能です。

ベターがマストを排除してしまっているケースもあります。【提言1】でも示しましたが、学校行事の準備のために、教科指導の時間が食われてしまうことがあります。小学校6年生の980コマの授業のうち53コマが行事等の準備に使われてしまっている事例がありました。特に運動会や学習発表会の準備に時間がかかり、教科をつぶさないと間に合わないのです。中学校では、宿泊学習の準備を「総合的な学習の時間」や「道徳」でカウントしてしまう例があることも聞きました。部活動もベターの扱いですが、放課後に設定され、授業の準備が部活動終了後、勤務時間終了後になるのは、優先順位が逆になってしまっていると言わざるを得ません。

これらの弾力的な運用によって、運動会や学習発表会、宿泊学習、卒業式、部活動などが充実し、子どもたちや保護者にとって満足してもらえることも分かります。通知表も詳細な記述があれば受け取る側は嬉しいでしょう。

しかし、マストはマストです。子どもたちにとってよいと言って、削減されたり優先順位が逆になるのは望ましくありません。

学校におけるマスト中のマストは教科等の指導です。例えば前述の6年生の教室では、1年間に授業が可能なコマ数は1,100コマでした。学習指導要領に定められた教科等の時間数は980コマですから、120コマの余剰があります。120コマの使い道は、学校行事、クラブ・委員会、児童活動ですが、コマ数の設定はされていないので、縮減は可能です(現状はほとんどの学校で余剰をオーバーしていると思います)。しかし、ここにさらに行政の事業やイベントなどが割り込んできます。例を挙げれば、国は全国学力・学習状況調査を、県は体力・運動能力調査を、市町村は独自の学力調査や自治体の行事を下ろしてきます。今挙げたのはほんの一部です。

マストとベターの区別をするというのは、まずマストの時間を確保し、残りの時間でベターを行うという考え方です。学校は無限の時間があるかのようにベターが詰め込まれますが、マストを圧迫するような入れ方はもちろんNGです。

今は見直しのチャンスです。マストとベターを行政と学校が改めて見直し、マストを確保するためにベターを削減することを丁寧に保護者や地域に説明して理解を求めることが必要です。結果として今までより魅力のない学校になるかもしれませんが、それがあるべき等身大です

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