学校の働き方改革「10の提言と50の具体策」

持続可能な学校をつくるための具体的な提案

【提言3】「グレー」な運用を適正化する

学校がブラックになったのは「グレー」が多すぎるからです。

朝、多くの小・中学校で子どもたちは8時前には学校に到着しています。職員の勤務開始は8時15分くらいのようです。子どもたちが早く到着することで教職員は勤務時間の30分〜1時間も前の出勤を強いられています。これは明らかに問題です。

問題があるにもかかわらず、弾力的な運用が行われてきたのは、子どもたちのためとも言えるし、保護者や地域のためとも言えますが、献身的であることを美徳とする学校の姿勢が根底にあったと思われます。しかし、今それが大きな仇となりました。

教員の休憩時間にも問題があります。休憩時間を、子どもたちの給食時間と重ねたり、昼休みと重ねたりして「取ったこと」にしていますが、もちろん実際は取れていません。6時限後に設定する場合もありますが、部活動と重なっていたり、職員会議が入ったりします。ただ設定はしてあるので「黒」ではないですが、極めて濃いグレーです。

そもそもの業務量も問題です。勤務時間内でできる仕事は、授業と生活指導でいっぱいで、残りの時間に授業準備をしたらはみ出るほどです。しかし、それ以外に大量の書類作成や会議、行事の準備などがあります。給特法では残業を命令しないため自主的・自発的な活動として処理されますが、本来は時間外に行う仕事は「ゼロ」であるべきです。命令のない残業によって過労死する教員がいる運用はどう考えても「黒」なのですが、法的には「白」にしかならないのが現状です。何ともやり切れません。

部活動は通常16時〜18時あたりに設定されています。子どもたちにとってはシームレスな活動ですが、教員は勤務時間終了を境に勤務の態様がガラッと変わります。勤務時間内は命令ですが、それ以降は「自主的・自発的な活動」の扱いになり「無給」になります。教員に事故があった時に公務災害補償の対象となるかどうかも不透明です。勤務の態様が変わることが知らされることもなく公然と仕事が続けられています。これも実にグレーです。

土日の行事等の参加もグレーであることが多々あります。管理職から「子どもたちを引率して公民館に行ってください」などと言われますが、それが「命令」なのか「依頼」なのかは知らされることはほぼありません。部活動手当に相当する手当が支給されることもありますが、ボランティアで済まされることもあります。また、週休日の振替措置が取られることもありますが、中には学校の教育活動とは関係のない行政のイベントにも参加させられることがあります。それが許されるなら校長の家の庭掃除をさせられてもおかしくないでしょう。ここでもグレーなままの運用が許されています。

さて、学校の働き方改革を進めるのならこのグレーな運用をまず「白」か「黒」に分けるべきでしょう。許される部分(白)とそうでない部分(黒)を定め、すぐには無理でも、グレーと黒のない運用に変えていく努力が必要です。

これによって教員の意識改革を進めることも可能だと思います。例えば、土日の行事に言われるまま出ていたのが、「命令ではない」「断ることも可能」と知ることで働き方を選択することができます。管理職も勤務の態様を説明し、負担が増える分の削減を提案しながら依頼をするなどの工夫が必要になります。

保護者や地域にも意識改革は必要です。例えば、できるだけ子どもを早く学校に出したい保護者、土日にかかわらず学校から子どもを参加させてほしい団体などは反対するかもしれません。しかし、制度が変わったのですから理解していただくしかありません。消費税が5%から8%になってもみんな従っているのですからそれくらい充分に許容範囲内でしょう。「教育の未来を守るために必要なのです」と理解を求めましょう。

給特法のもとでは本来、残業は「やりたい放題」「させ放題」ではありません。まずは文部科学省が「残業はゼロが基本」と示せば、そこに近づける運用をみんなで考えなければいけません。文部科学省も相当な制度改革と予算確保が必要になります。今まではその努力をせずに、全部教員にツケを回していたのですからこのような事態になったのです。同じようなことが教育委員会にも言えます。グレーを「白」「黒」に分けるだけで、学校の働き方改革は意識改革も含め、前進の力が強まるでしょう。

グレーは「ブラック」にしかなりません。【提言2】で述べた人材確保のためにも、グレー運用は排除すべきです。

f:id:nozzworld:20181110190504p:image